>> 前のページへ戻る


2005/11/30 掲載 「英行君支援−「生」の温かさを伝えたい−朝日新聞秋田版朝刊」

 「心臓移植の雲雀英行君の支援募金が目標金額の6千万円を超えた」 

 そんな新聞記事を先日、読みました。たくさんの支援の輪を感じ、とても温かい気持ちになりました。 

 10月1日に、僕は英行君の存在を初めて知りました。その日、秋田西中の体育館で教育・心理カウンセラーによる子育てを考える講演会があり、僕も会場に足を運びました。講演会が終了した時、「少しお時間をいただきたい」とスタッフが声をあげました。同時に1枚のビラが配られました。壇上に上がってきた男性は「約6千万円という、とても個人では負担できない金額。だから募金活動をすることにしました。ご支援とご協力をお願いします」。そう言って深々と頭を下げた男性が、英行君のお父さんでした。 

 何かの縁を感じ、無意識のうちに電動車いすでお父さんのともへ。「救うことのできる命は救いたい。自分にできることが何かありますか」。そこで提案したのが、僕と「ひでゆき君を救う会」のホームページ(HP)のアドレスのリンク。「広く募金を呼びかけたいので、リンクさせてもいいですか」。気持ちを伝えると、お父さんは「とてもうれしいです。よろしくお願いします」と快諾してくれました。 

 10月12日、県庁で記者会見があり、募金の振込先が発表されて本格的な募金活動がスタートしました。僕は知人らに「募金に賛同してくれる人は、支援をよろしく」とメールを送りました。 

 英行君を救いたいと思う人たちが、自分のできることをすれば、きっと英行君を救うことができる。そう信じていました。僕は、HPやメールで募金を呼びかけました。知人らも街頭に立って募金活動に参加。メールやHPで、英行君を紹介してくれました。予想以上の広がりでした。 

 秋田西中では、生徒会が中心となって募金活動をしました。毎朝、生徒会の生徒が、玄関で募金箱を持ち募金を呼びかけました。1週間で集まった募金額は、7万円以上。「同世代だし同じ秋田市の中学生。ひとごととは思えない」。生徒の一人は、そう言っていました。募金に協力する生徒たちを見て、うれしさと同時に英行君を身近な存在ととらえてくれたことに、頼もしさを感じました。 

 僕は教師として、英行君の募金活動から学んだことを生徒に語りかけました。「今、英行君は何を一番したいのかな。みんなと同じように、授業を受けて、休み時間は友だちと遊ぶ。仲間たちと中学校生活を送りたいんじゃないのかな」と。 

 ありふれた日常にこそ、かけがえのないものがあると思います。生徒たちには、「今」を大切に生きてほしい。そして、支援の広がりに、見て見ぬふりではなく、常に自分にできることを考えられる人間になってほしい。 

 生徒に語りかけたとき、僕は教師の面白さを感じました。未来を担う人たちに、自分の思いを伝えられたからです。英行君の生きたい気持ちと彼を助けたい気持ち。生きることは、とても温かいこと−。生徒にこのことを一番伝えたい。 

 これからも、英行君の病気との闘いを、見守っていきたいと思います。



[前のページ] [ガクちゃん先生の学校通信] [次のページ]

このサイトの写真・文章などは、手段や形戴を問わず複製・転載することを禁じます。