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2005/09/14 掲載 「合唱祭−結果よりも力を出し切ろう−朝日新聞秋田版朝刊」

 今、学校内のあちらこちらから生徒たちの歌声が響いてきます。17日の合唱祭に向けて、クラスごとに練習しているのです。職員室まで聞こえてくる歌声は、僕の仕事をはかどらせてくれます。 

 合唱祭は、各クラスで話し合い、歌いたい曲を選曲します。クラス対抗で「最優秀賞」「優秀賞」「優良賞」などの賞を目指し、競い合います。ただし、賞を取ることが教育目的でなく、クラスが合唱曲を歌い上げることで、団結を深める行事です。 

 合唱祭にまつわる思い出があります。中学3年生のとき、クラスで『怪獣のバラード』という曲を歌いました。本番に向けて、毎日毎日繰り返し練習しました。クラスの仲間は、なかなか音程をとることができない僕に、キーボードを使って、音程の取り方を教えてくれたり、一緒に歌ってくれたりしました。 

練習を重ねるうちに、「クラスで力を合わせ、すばらしいハーモニーを奏でたい」と思うようになっていました。 

 合唱祭が近づくと、不思議とクラスがまとまっていくのを感じました。言語障害のある僕を、周囲の友人が受け入れてくれました。みんなの前で歌っても笑う人はおらず、歌い終わったら拍手してくれました。 

クラスの仲間は、大きな声で歌っていた僕に「ガクちゃんは声が出ているね」。僕は、だんだんと歌うことが好きになっていきました。本番も、ステージ上で口を大きく開けて歌いました。クラスの団結で、結果は最優秀賞。教師になった今、歌声が聞こえてくると、あのときのことが思い出され胸が熱くなります。 

 合唱は、生徒一人ひとりの気持ちが歌声を通して聴衆の心に届きます。生徒のひたむきさに感動し、クラス全体がまとまったときのパワーに圧倒されます。歌い終わった後の達成感に満ちた表情、審査結果に一喜一憂している姿にエネルギーを感じます。 

生徒たちには「どんな場面でも、自分の力を出し切ろう」と言っています。自分の持てる力を出している生徒たちの姿にすがすがしさを感じ、合唱とともに印象に残ります。だから、合唱が聞こえてくると、5年間の教師生活の中で出会った生徒たちを思い出します。 

 歌声の響く校内を歩いていていると、私が学級担任になったとき、どのような指導をしようかなと考えます。音程のとり方など技術指導も大切ですが、一番大切なことは歌うときの心だと思います。審査結果よりも、合唱祭で力を出し切れたかどうかが大切。生徒には、そう語っていきたい。 

どんな時も精いっぱいの力で生きていくことが僕の生き方。生徒たちの精いっぱいさが伝わってきたら、100点満点をつけたい。 

 今年の合唱祭を楽しみにしつつ、生徒たちに静かなエールを送っています。



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