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2005/06/22 掲載 「鹿嶋祭り−新屋地域の温かさ伝わる−朝日新聞秋田版朝刊」

 12日に日吉神社(秋田市新屋日吉町)の「鹿嶋祭り」がありました。毎年6月の第2日曜、「鹿嶋大明神」ののぼりを持った子どもを先頭に、色とりどりに飾られた「鹿嶋船」をひいて練り歩く子どもの祭りです。子どもの成長と無病息災を祈る祭りで、300年の伝統を持つと言われています。 

 小学校のとき、僕もこの祭りに参加していました。太鼓の音に合わせて“ショッショッショッ!鹿嶋のおぐりしょう、ショッショッショッ!寺のかげまでおぐりまでしょ”と、鹿嶋唄(うた)をうたいながら、鹿嶋船を引っ張りました。 

 今年は新屋に住む地域の一人として、鹿嶋祭りにかかわりました。 

 祭りの1週間前から、午後6時を過ぎると、町内の会館で、町の人たちが鹿嶋船に載せる搭載物を作りました。僕は学校から真っすぐ会館に電動車いすを走らせ、午後9時ごろまで作業しました。「先生が祭りに来てくれてうれしいよ」、「先生、当日は電動車いすで鹿嶋船と一緒に歩くんだすべぇ」と地域の方々。 

 祭りでは家中の災いを背負わせた武者人形を鹿嶋船に載せます。ハサミとノリで、この武者人形を町内の方々と作りました。僕は手先が器用でないけれども、コミュニケーションを取りながら作業した2時間は楽しいひとときでした。 

 祭りの朝は小雨交じり。午前10時ごろから、子どもたちが出発場所に集まってきました。地域の方が僕に祭りのはんてんを着せてくれ、帯を締めてもらうと気持ちが高まってきました。 

 午前10時40分ごろ、公立美術短大前を出発。太鼓を鳴らし、町内を練り歩きました。久しぶりの太鼓の響きに、子どもの頃を思い出しました。町の人は、太鼓の音が聞こえてくると玄関先に出てきて、鹿嶋船の搭載物を見て感嘆したり、「いってらっしゃい」と子どもたちに手を振ったりしていました。昔と変わらない光景に安心しました。 

 他の町の鹿嶋船とすれ違っては、趣向を凝らした搭載物を見て楽しみました。子どもたちは小雨の中、鹿嶋船を引っ張り、神社でおはらいをしてもらった後、町内に戻りました。 

 「先生には、もっとこの地域を知ってほしい」「今度、町内の行事があったら気軽に参加してね」。祭りの後の直会(なおらい)で、お酒を酌み交わしながらお互いの労をねぎらいました。 

 子どもの頃、ワクワクした祭りでしたが、今回、子どものときには感じなかった苦労や「健康に育ってほしい」という大人の思いが伝わってきました。新屋地域の人の温かさでした。温かさは子どもを育てると思います。地域の方の祭りへの思いは、そのまま子どもたちへのメッセージのようでした。「この地域で、自分が育ち、現在の僕が存在する」と思うと、心が熱くなってきました。 

 また、祭りを通して地域のまとまりを感じました。助け合いや支えあいは、人とのかかわりの中から生まれてきます。地域に住む障害者として、地域の行事に積極的にかかわることで、理解が生まれてくるような気がします。顔見知りが増え、気軽に声をかけたり、かけられたり。さらに、一人の教師として地域を知ることがその地域で育つ生徒の理解へとつながっていくと思います。 

 町内のみなさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。改めて“お祭り好き”を自覚しました。



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