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2005/06/08 掲載 「避難訓練−緊急時への対応に大きな自信−朝日新聞秋田版朝刊」

 5月下旬、今年度初めての避難訓練がありました。緊急時に一番大切なことは生徒の命を守ること、教職員の命を守ることです。学校にいるすべての人の命を守ることが緊急時の対応と考えています。 

 中学校は教科担任制で、緊急時は、教室で授業をしていた教科担任が、責任を持ってそのクラスの生徒の命を守ることになります。 

 1週間の総授業数を30時間(1日6時間×5日間)とすると、僕は、2階(1年生)の教室で12時間、3階(2年生)の教室で6時間、1階(3年生)の教室で1時間の授業をしています。僕は1年部所属なので、授業のほかに総合的な学習の時間などを含めると、週の授業数の半分は2階で授業をしています。 

 今年度の避難訓練は、学級活動の時間に実施しました。学級活動は学級担任が指導するので、訓練も学級担任が生徒を避難させます。学級担任でない僕は学級活動の時間は職員室にいることになっていました。 

 職員室は1階にあります。平面上の移動が可能な僕は、1階なら自力で避難経路から避難できます。しかし、今年度は2階にいる確率が高いので、2階から避難した方がよりリアルな訓練になるのでは、と先生方に提案しました。 

 僕が2階の教室にいた場合、生徒を避難経路に沿って避難させることはできます。しかし、僕は一人では簡単には階段を下りられません。生徒の命を守ることができても、自分の命を守ることができません。そこで、先生方と話し合い、2人の男性教師に「三戸救助隊」を担ってもらうことになりました。 

 いざ避難訓練。僕は2階のある教室にいました。訓練の前に生徒たちに「僕は僕を救助する先生と一緒に避難します。必ずみなさんが待っているグラウンドへ行きますので心配しないでください」と話し、生徒の不安を和らげました。 

 しばらくして、避難警報が校内に鳴り響きました。「揺れがおさまったので避難を開始してください」という放送で、一斉に避難を開始しました。 

 僕が廊下に出たとき、救助係の先生が僕を見つけてくれました。2階の全生徒が階段を下りた後、その先生の肩を借りて、急いで階段を下りました。昨年度、1階の避難経路はノンステップにしたので、1階に下りた後は自分で避難できました。グラウンドへ行くと、ちょうど最後のクラスがグラウンドへ避難してきたところでした。 

 全校生徒が避難するまで約4分。僕は教師として緊急時への対応ができると、大きな自信を持ちました。後で救助係の先生に聞くと、僕を捜すのに手間取ったようでした。今回は、僕が2階のどこの教室にいるのか分からない想定でしたが、通常の授業中の場合、時間割りを見れば僕がどこのクラスで授業をしているのかは分かります。 

 緊急時の僕(障害者教員)の対応を考えるには、このように現場で積み重ねていくことが大切です。 

 普段、携帯電話を首にぶら下げて校内を歩くときがあります。前後の教室が空き教室のときなど、緊急時に応援してくれる先生が少なくて不安を感じる場合などに持ち歩いています。そんな場合、生徒は携帯に興味があるようで寄ってきます。生徒に「これが僕の命綱だよ…」と説明すると、ほほ笑んでくれます。何となく安心します。



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