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2005/03/09 掲載 「僕の一日−階段昇降周囲の助けが支え−朝日新聞秋田版朝刊」

昨年の5月中旬から、ある1年生の男子生徒と一緒に学校へ行くようになりました。ある朝、いつものように玄関を出て、電動車いすの置き場に行くと、男子生徒が待っていました。 

 生徒が「たまたま通りかかったら、先生の電動車いすがあったから、待っていたんだ。僕の家、先生の家のすぐ近くだから、先生を迎えに来てもいい?」と言うので、「いいよ。7時40分ごろに来てね」と生徒と約束しました。 

 その日以来、毎朝7時40分ごろ、その生徒が迎えにきます。電動車いすで約6分の通勤時間。部活動や授業、好きな音楽のことなどを話して、一緒に学校へ行きます。生徒が約束の時間に遅れると、僕が先に学校へ行きます。僕が先に行ったかどうかは、電動車いすの有無で分かります。雪が積もると、電動車いすが埋まるので、「春が待ち遠しいね」と話しながら学校へ行っています。 

 7時55分ごろに学校へ着くと、出勤簿に押印し、出勤札をひっくり返します。そして、8時ごろに同僚の先生と3階にある1年生の教室へ向かいます。このとき、階段昇降機を使って上ります。一日の始まりなので、あまり体力を消耗しないようにするためです。 

 昇降機は電動の手押し車のような作りで、僕はいすに座り、同僚の先生が操作をしながら上り下りしてくれます。1階から3階に着くまでにかかる時間は約5分。昇降機に乗っていると、1年生の生徒はもちろん、3年生とも階段で対面します。生徒一人ひとりの表情を見ながら、「おはよう」と声をかけることが日課です。生徒たちも「おはようございます」と返してくれます。 

 3階に着くと、昇降機から降りて、校内専用の電動車いすに乗り換え、クラスに行きます。8時5分ごろから、朝読書や学活の時間を過ごして、1時間目の授業に入ります。 

 1週間に一度は職員室で朝の打ち合わせがあるので、8時20分ごろにいったん1階へ下ります。同僚の先生の肩を借りて階段を下り、1時間目に授業があるときは、再び同僚の肩を借りて3階へ向かいます。 

 授業後も同僚の先生の肩を借りますが、だれもいない場合、3階の教科準備室から職員室に内線電話をかけ、だれか空いている先生に来てもらいます。 

 職員室から教室に向かうときは、普段は先生と一緒に3階まで行きますが、時々は生徒と一緒に上る機会を作りたいと思い、階段に座って待つことがあります。そして、最初に通りかかった生徒に声をかけて、一緒に上ります。3階までは、2人の生徒に両脇を抱えてもらっています。 

 このような感じで、1日を過ごします。朝から放課後まで、1〜3階を5往復くらいします。1日の終わりには、再び階段昇降機を使って下ります。同僚の先生方や生徒の日常的なサポートが僕の教師生活を支えています。 

 放課後、僕が担当する卓球部の生徒が僕を迎えに来て、2階の体育館へ連れていってくれます。部活が終わると、生徒と一緒に階段を下ります。そして、職員室で授業のプリントを作ったり、生徒へのコメントを書いたりします。 

 自宅に仕事を持ち帰るのが嫌なので、ほとんどの仕事を学校で片付けます。パソコンのキーボードは、右手の人さし指1本を使い、カナ入力で打ちます。ローマ字入力よりタイプする回数が少なくてすむからです。帰宅は、毎日午後8時ごろです。 

 今年度1年間は、このように過ごしました。11日は卒業式、18日は修了式があります。1年が終わるにあたり、あらためて同僚の先生と生徒に感謝したい気持ちでいっぱいです。僕とかかわる人の何げない助けがあるからこそ、僕の教師生活が可能となっています。



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