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2005/02/09 掲載 「続・地震、そのとき僕は……−迅速な対応へ携帯は必需品−朝日新聞秋田版朝刊」

 前回、地震発生時の対応や危機管理意識を書きました。地震などが起こった場合、生徒を階段まで誘導し、生徒に避難経路を指示して、階段を下りてもらいます。生徒の安全を確認できたら、他の先生の助けを待つ、と書きました。 

 今年度、主に3階の教室で授業しています。改めて、自然災害などの緊急時の対応について、考えてみました。 

 前回の原稿を書いた後、よく考えると僕一人でも階段を下りることができることに気づきました。それは、はって下りることです。実際に、3階から1階まではって下りてみました。3階の階段の手前で廊下に座り、両手を使い、一段ずつお尻をずって下りました。両腕の腕力が必要と感じました。時間は約3分かかりました。しかし、緊急時の一刻を争うときに数段でも自力で下りることができれば、それだけ助かる確率も高くなると思いました。 

 ただし、生徒の避難時に僕がはって階段を下りると、階段のスペースが狭くなり、生徒の避難の妨げになります。すべての生徒が階段を下りてから僕が下り始め、階段を下りながら他の先生が助けに来ることを待とうと考え直しました。 

 階段をはって下りることは、手すりに身体を預けながら一歩一歩足を下ろしていくのと違い、転倒する危険性はありません。 

 次に放課後について書きます。今年度、卓球部の部長を務めているので、放課後は卓球部の練習を見守っている日が多いです。秋田西中の体育館は2階にあるため、僕は携帯電話を持ち歩いています。男子と女子部の両監督の先生が不在のときは、僕が卓球部の生徒を監督します。何か不測の事態が起こった場合は、すぐに携帯電話で職員室に電話をかけ、体育館の状況や生徒の様子、僕が体育館にいることを伝え、指示を仰ぎます。部員の命を守るために迅速な対応ができるようにしています。 

 放課後は授業時と比べて、教師は決まった場所にいるとは限りません。授業中なら時間割りから「今、○年△組の教室にいる」と居場所をすぐにつかめますが、放課後はそれが難しくなります。携帯電話を持ち歩けば、現在の僕の居場所や生徒の様子などを伝えられます。移動に障害のある僕がその場にいながら、危機管理上の最低限の情報を伝えることができるので、携帯電話は必需品です。 

 また、不審者対応も同様です。報道される学校への不審者侵入事件で、不審者は1階から侵入しています。今年度、1階の教室で授業することは少ないのですが、1階の教室で授業するときも、必ず背広のポケットに携帯電話を入れています。窓や廊下を見て、不審な人がいたら、すぐに職員室に電話をかけるようにしています。今まで一度もありませんが……。 

 前回の記事を読んで、「自然災害や不審者への対応は、教師一人ひとりの危機管理意識の向上も大切だけど、学校全体の取り組みが大切だ」と同僚の先生が感想を聞かせてくれました。 

 『僕(障害者)が働きやすい職場環境は、他の先生方にとっても働きやすい職場になり、すべての生徒が生活しやすい学校になる』という昨夏のアメリカ研修で学んだことが学校の共通認識になり、僕がより働きやすい職場に改善されることを願っています。 

 例えば、僕が希望することは、僕が授業する教室を1階にすること。さらに、授業する教室を固定し、僕が同じ教室で授業ができるようになることです。こうすれば、緊急時の対応策を少なくできます。 

 僕ができることとして、とりあえず今、2、3階で授業しているときに、僕自身が安全に避難できる「障害者専用避難グッズ」などがあるかどうか探しています。このような心がけが大切なような気がします。『備えあれば憂いなし』です。



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