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2004/09/01 掲載 「チョークホルダー -生徒との会話弾む米国土産-朝日新聞秋田版朝刊」

この夏、秋田県教育委員会主催の「海外自主企画研修事業」で、アメリカのアーカンソー州ファイアットビルへ研修に行きました。初めての海外で、少しの不安と大きな期待を胸に成田空港を飛び立ちました。成田ーシカゴーファイアットビルの航路の往復でした。愛用の電動車いすを持ち込んでの1週間。事故もトラブルもなく、健康そのもので無事に終わりました。 

この研修中、ファイアットビルの中学校を訪問しました。夏休み中でしたが、学校内に入ることができました。各教室に行くと、黒板にチョークホルダーが置いてありました。チョークホルダーは、円筒形のチョークを覆い、手の汚れを防ぐために使用するものです。僕の周りでチョークホルダーを使っている先生はあまり見かけませんが、アメリカではチョークホルダーを使うことが一般的なのかなと思いました。 

4年前、教師に成り立ての頃は生徒が僕の代わりに板書して、授業を進めていました。チョークを持って黒板に字を書くと、脳性マヒ特有の不随意運動で余分な力が入り、チョークをポキポキと折って、字を書くことができなかったからです。しかし、次第に「黒板に字を書いてみたい」気持ちが強くなり、その年の6月、文具のカタログで「チョークホルダー」を見つけました。 

その製品を見たとき、直感的に「これなら、大丈夫かもしれない」と思いました。予想的中で、力が入ってもチョークは折れず、片言の文字を板書できるようになりました。それ以来、チョークホルダーを愛用しています。 

中学校訪問後、ファイアットビルの文具店へ行くと、僕が使っているプラスチック製のホルダーではなく、ステンレス製のホルダーを売っていました。色はゴールド、シルバー、ブルー、レッド…とカラフルで、ロゴが書いてあり、とても気に入って、お土産に買ってきました。 

帰国して26日から学校が始まり、久しぶりの生徒の表情を見て、元気そうで一安心をしました。学校生活のあらゆる場面で、生徒にアメリカで学んできたことを伝えたいと思っていたところ、生徒の方からアメリカ製のチョークホルダーに反応してきました。 

授業中、ホルダーを見た生徒が「かっこいい!」と一言。僕が「アメリカから買ってきたんだよ」と言うと、「いくらしたの?」「3ドルだよ」「日本円にすると…1ドルいくら?」と生徒との会話が弾みました。 

手に取った生徒が「先生、日本のチョークが入らないよ。チョークがなくなったら輸入するの?」。アメリカのチョークは日本よりも細いことに初めて気づき、「どうしようかな…」と一緒に笑いました。 

「アメリカ、どうでしたか?」。同僚の先生方や生徒が聞いてくれます。「百聞は一見にしかず」でした。アメリカの文化、町並み、教育事情、福祉…僕が見てきたアメリカを伝えていきたいです。このような経験を与えてくれた県教委に感謝しています。今、訪問先で頂いた資料を読み、研修で学んだことを、報告書にまとめています。 

アメリカ研修から帰って間もなく、生徒が家に遊びに来ました。「先生、おかえりなさい。待っていたよ」という生徒の言葉が一番心に響いてきました。



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