>> 前のページへ戻る


2004/08/18 掲載 「階段での出来事−生徒に「助け合いの心」育つ−朝日新聞秋田版朝刊」

 秋田西中は2階に体育館があります。階段を1人で上り下りできない僕にとって、体育館に行くためにはサポートが必要です。 

 6月下旬の放課後の出来事。体育館から職員室に戻ろうと、近くにいた男子生徒に「1階に下りたいので、肩を貸してくれますか」と声をかけました。すると、「嫌だなぁ、先生に肩を貸したくない」と軽いのりで断りの返事。「○○君が肩を貸してくれないと、僕は職員室に戻れないよ」と言うと、「他の人に頼んでよ」。その場は別の生徒の肩を借りて階段を下りました。 

 教師生活4年目。今までもサポートを頼んで、生徒が断ることはありましたが、「肩を貸しなさい」と威圧的に生徒と接することはできません。生徒に強制したことは一度もありません。教師と生徒の関係というより、人と人との関係と考えているからです。生徒は僕に肩を貸したくて、貸してくれていると受け止めています。 

 街中でも、僕が声をかけて気軽に応じてくれる方は7割くらい。3割は通り過ぎていきます。大人ができないことを、子どもに押し付けることはできません。子どもに助け合いを説くのなら、大人が手本となって子どもに見せることが大切と考えます。 

 教師だから手伝う生徒でなく、困っている人に、そっと手を差し伸べる生徒になってほしい。今まで、手すりに寄りかかって階段を上ろうとして汗だくになった姿や、階段をはって上る姿など、不便な姿を生徒に見てもらいました。ゆっくりと時間をかけて、「助けたい」と思う気持ちが育つのを待ちました。だけど、今回はちょっと違いました。 

 次の日の休み時間、サポートを断った男子生徒が「昨日は、手伝わなくてすみませんでした」と謝りに来ました。階段の様子を見ていた周りの生徒から男子生徒の担任に伝わり、謝るよう促されたのでした。 

 僕は全く気に留めなかったのですが、周囲の生徒が気に留めていたのでした。「お互いに助け合う心」が育っているように思いました。生徒の成長を感じることができ、うれしく思いました。男子生徒に対して「気にしていないよ。謝りにきた君の気持ちがうれしい。良い仲間を持ったね」と伝えました。 

 その日の放課後。男子生徒から「先生、車いす押しますよ」。「ありがとう。これからも、頼むね」と言うと、「いいよ」と笑顔で応えてくれました。



[前のページ] [ガクちゃん先生の学校通信] [次のページ]

このサイトの写真・文章などは、手段や形戴を問わず複製・転載することを禁じます。