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2004/03/31 掲載 「転勤-伝わった「生徒といっしょ」-朝日新聞秋田版朝刊 」

4月から、母校の秋田市立秋田西中学校に転勤し、教師生活を送ることとなりました。教師にとって学校の異動はつきものです。身辺整理をしながら、働き慣れた学校と、同僚の先生、生徒たちとの別れに感慨を深めています。初任校の土崎中で過ごした3年間は、僕に「働くこと」を教えてくれました。壁にぶち当たり、悩んだときもありましたが、振り返ると、とても充実した毎日でした。同僚の先生方、生徒の保護者、地域の方々、そして、何よりも生徒に感謝します。 

3年前、校長先生から「部活は港囃子(ばや・し)保存部を担当してください」と言われ、「港囃子?」と困惑しました。土崎の港祭りは知っていても、港囃子は見たことがありませんでした。部活の生徒と顔合わせしたとき、初めて聞く「寄せ囃子」は、異文化のにおいがしました。 

あれから3年。中学校総合体育大会では、野球の応援でスタンド中に「寄せ囃子」を鳴り響かせました。休日には地域の方も笛を持って加勢してくれたり、文化祭に「港囃子保存部」の演奏を聞きにきてくれたりしました。そして7月の土崎曳(ひ)き山祭り…。いつの間にか太鼓・笛・鐘の音に心地よさを感じるようになりました。 

土崎中で一つだけやり残したことがあります。それは、学級担任になること。これは僕の熱望であり、いつの間にか生徒の熱望でもありました。年度の終わりごろ、「先生、私たちの担任になってよ」と数人の生徒が言ってくれました。教師として、この上のない言葉。「先生のこと、1年間待ったんだからな。今度こそ、オレたちの担任だね」と言って、ニッコリ笑った2年生の男子生徒。生徒の言葉に勇気づけられ、励まされました。 

「どうして担任を持てないの? 私は大丈夫だと思うよ」「障害があるから?」。学級担任として他の先生方と一緒に働く姿を見せることが大切なのではないでしょうか。生徒たちに「障害があるから、担任はできない」というイメージを抱いてほしくない。僕の学級担任の姿を見せることができなくて残念です。 

僕がかかわった生徒は、いつまでも僕の生徒です。僕の教育理念は、生徒一人ひとりが自分らしく、笑顔がステキな人間になってもらうこと。僕もそう生きていかなければと思います。僕のモットーの「生徒といっしょに」は、生徒に十分に伝わった気がします。「先生のクラスになりたい」という生徒の言葉はその証しです。電動車いすで通勤する姿、階段の上り下りに肩を借りる様子、最初は何を言っているのか分からないけれど、慣れると分かってくる言葉…。生徒は僕を一人の教師としてしっかりと受け止めてくれました。 

ある生徒の言葉です。「先生ができることは、先生がやって。できないことは、私たちやるから。当たり前じゃん。だって、私たちの先生だもん」



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