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2004/03/03 掲載 「卒業式-3年間の積み重ねを大切に-朝日新聞秋田版朝刊」

 3月は卒業式シーズン。例年、名残を惜しむ人々の気持ちを象徴するかのように、名残雪が別れの季節を彩ります。春の足音を聞きつつ、肌寒さを感じながら、門出を祝い、身体が内側から温かくなる……これが秋田の卒業式シーズンと思います。 

小中学校・高校・大学と四つの卒業式を経てきました。中でも、中学校の卒業式は一緒に育ち、学んできた仲間と別れ、一人ひとり旅立つスタートラインの日。高校入試の合否を気にかけながらも、仲間との思い出を惜しむ気持ちと、4月に始まる新生活への期待と不安が混在していたことを思い出します。 

 12日は土崎中の卒業式です。学校行事のビッグイベント。今年の卒業生は僕が初めて3年間かかわった生徒です。僕の教師生活と卒業生の歩みを重ねることができます。卒業生が1年生のとき、チームティーチング(2人の教師が一緒に授業を行うこと)で数学を教えました。2年生では授業を受け持たず、3年生では昨年12月までチームティーチングで授業を担当しました。 

 一緒に階段の上り下りをする生徒に「随分と成長したなあ」と言いました。生徒の肩に腕を回すので、肩幅が大きくなったことに生徒の成長を感じます。生徒は笑みを浮かべていました。階段は生徒との絶好のコミュニケーションの機会。「もう少しで、キミと階段の上り下りができなくなるなあ。今までありがとう」と言うと、「あまり先生に肩を貸すことができないで、ゴメンね」と生徒。「街で先生を見かけたら、気軽に声をかけるよ」と言う生徒や「全然、気にすることないよ」と言う生徒もいました。 

 教師になる前、僕は「生徒とかかわることで、何かを伝えたい。きっと、それは人間の成長にとって大切なものだ」と考えていました。卒業生は「一緒にいることの大切さ」を教えてくれました。ここで、その大切さは何かと具体的に書くことはできません。なぜなら、それは毎日の学校生活にあるからです。一緒に話したり、笑ったり、時には怒ったり……何げない行為の積み重ねが、とても大切なことに気付きました。 

 一人ひとりの卒業生には、自分らしく生きてほしいと思っています。自分らしさは他人から見いだされるものでなく、自分で見いだしていくもの。ぶっちぎりの自分らしさで、この社会を歩んでいくことを期待しています。



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