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2003/11/12 掲載 「電動車いす-話しながら一緒に登下校-朝日新聞秋田版朝刊 」

2学期から、雨の日を除いて電動車いすで通勤しています。自宅から学校まで、最高速度の時速6キロで15分。快適なドライブです。 

 初めて電動車いすで通勤した日は生徒がどのように受け止めるのか、楽しみと不安でいっぱいでした。乗り始めて、2、3日の放課後は電動車いすは人気者でした。10人くらいの生徒が「乗らせて」と言ってきました。実際に乗ることで、理解を促したいと思っていたので、気持ちよく応じました。 

 右側にあるスティックを縦横に動かすと、動きます。その度に「オー」「キャー」「ゴーカートみたい」などと歓声が上がりました。その様子は「理解」というよりも「ふざけている」としか見えず、「これは、僕の足の変わりだぞ。君たちの遊び道具ではないよ」と注意しました。同僚の先生も「ふざけるのであれば、使用禁止にした方がいい」。しかし、1週間もたたないうちに、物珍しさも消え、生徒に自然に受け止められるようになりました。 

 「先生、どこか悪いの?」「歩いた方がいいよ」と声をかけてくる生徒もいました。今まで徒歩で通勤していたので、不思議に思う気持ちは分かります。「他の先生も、車で来たり、電車で来たりしているでしょう。それと同じだよ」と説明しました。時間をかけて、僕のありのままを見てもらおうと思っています。 

 電動車いすの一番の利便性は、友だちのペースで歩きながら話せることです。徒歩だと、僕のペースに友だちが合わせないといけません。ある朝、あいさつしてきた生徒に、「一緒に、学校へ行こう」と声をかけ、その生徒とたわいのない話をしながら学校に行きました。電動車いすで通勤するようになり、生徒と一緒に登下校するようになりました。僕から声をかけたり、生徒から声をかけられたり。徒歩では、親しい仲でないと、自分から「一緒に歩こう」とは言えません。でも、電動車いすだと自信を持って言えます。 

 はや11月半ば。電動車いすで通勤している者にとって寒さが骨身にしみる季節となりました。しかし、「先生。歩道に駐車していて、通れないね」などと、僕を気遣う生徒の言葉を聞くと、不思議にポカポカと温かくなってきます。



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