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2003/10/15 掲載 「文化祭その2−歌いたい気持ち みな同じ−朝日新聞秋田版朝刊−」

 前回の文化祭の続き。「土中祭」の準備で盛り上がっていたある日の放課後、3年生の男子生徒が「文化祭で、カラオケを歌ってください」と言ってきました。今まで、「歌を歌ってほしい」と頼まれたことがなく、思わず「本当にイイの?」と聞き返しました。「先生の歌を聞いてみたい」と生徒はニコニコ。その表情が僕を強烈に後押ししてくれました。 

 何を歌おうかと思い巡らし、「The Blue Hearts」の「Train−Train」を歌うことにしました。この歌は、中学1年生のとき、クラスの「お別れ会」で歌った曲です。そのとき、初めてクラスの副委員長をやり、クラスをまとめることに苦心した思い出があります。 

 人前で歌うので練習しようと、休日に友だちとカラオケに行きました。テンポが速い曲で、歌っているより流れる歌詞に必死でついていく感じでした。言語障害がある僕は、一つひとつの歌詞をはっきりと言うことができないでいました。「歌う曲を変えようかな……」と悩みました。テンポが速い曲よりも遅い曲の方が歌いやすいのです。そっちの方があまり僕の「障害」を感じさせないで良いのかなと思いました。友だちに伝えると、「イイ感じだよ。歌いたい曲を歌うとイイよ」と一言。 

 文化祭当日、恐る恐るカラオケ大会の会場へ行きました。たくさんの生徒がいました。「センセイ、こっち」と生徒。教卓を使っての特設ステージがありました。「ここで歌うの? 上がれないな」と思っていると、2人の生徒が両脇を抱えてくれ、一緒に上がりました。生徒の前でマイクを持って歌うのは初体験で、緊張しました。ステージに座り、歌い始めました。思うように口が回らず、練習の成果を聞かせることができませんでした。でも、それでもイイと思いました。僕の歌を聞いて、言語障害があってもなくても、歌を歌いたい気持ちは変わらないことを感じてくれたら。 

 後日、「センセイの歌、うまかったよ」と言う生徒。思わず、照れてしまいました。



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