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2003/07/09 掲載 「体育大会−走る生徒の姿、心に焼き付け−朝日新聞秋田版朝刊」

 青空の下、秋田市の八橋陸上競技場で今月3日、土崎中の体育大会が開かれました。種目は生徒全員が参加する50b走や持久走などのほか、代表選手が競う学級対抗リレーや部活動対抗リレーがありました。 

体育大会が近くなると、休み時間や放課後に生徒たちは「先生は走らないの?」「一緒に走ろうよ」と話してきます。僕は身体を動かすことが大好きで、生徒たちは自然にそれを察しているようなので、「僕のことをよく分かっているなぁ」と思っています。 

「走るの、遅いよ」と答えると、「いいよ。先生の走る姿を見てみたい」と生徒。そう言われると不思議に走ってみたくなります。 

 障害のある僕を見て、「身体を動かすのが嫌いではないか」「運動は苦手だろう」と思う人が多いようです。そう感じたら、僕は「スポーツが好きな障害者もいるし、スポーツが嫌いな障害者もいる。健常者と同じ、人それぞれです」と話しています。 

 体育大会で僕は式典係を担当しました。大会の10日ほど前、体育の先生に「僕ができる役割を与えてくれませんか」と相談しました。いろいろな学校行事の中で仕事をこなすことが若い教師の役目です。式典係は体育大会の開会式と閉会式の準備で、僕は生徒たち考えることになりました。 

大会の3日前、準備作業も本格化して生徒の役割分担を考えたり、選手宣誓の生徒を指導したりしました。学校行事の多くは当日の活動が注目されますが、事前の準備なくしてうまくいくことはありません。そう思いながら、生徒たちと一緒になって準備しました。 

 大会当日、僕は車椅子に乗って、トラックのすぐ横で生徒たちを見守りました。「がんばれっ」。僕が最大限にできることは生徒を後押しするような応援をすること。それと生徒の走っている姿を心に焼き付けることです。生徒が壁に当たってくじけそうになった時、「体育大会で走っていた君の姿を思い出すと、もう少しがんばれそうな気がするよ」と励まそうと思っています。 

 閉会式も無事終わりました。2年生の女子生徒が「先生、私の走っている姿を見た?」と声をかけてくれました。「うん。見たよ」。そう答えると、生徒はにっこりほほ笑んでいました。



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