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2004/06/02 掲載 「祭りの夜-巡回で子どもの頃を思い出す-朝日新聞秋田版朝刊」

5月26日、秋田市新屋で日吉神社山王祭りがあり、その当日と前日、新屋表町通りに、たくさんの出店が立ち並び、にぎわいました。25日は朝から雨交じりの天気で、夜には晴れ上がりましたが、少し肌寒いお祭りとなりました。 

 この日の夜、秋田西中の男性の先生方と巡回のため、学校から電動車いすで表町通りに行きました。電動車いすはバッテリーで動きます。バッテリーが満タンなら走行時間は約8時間。巡回途中で、バッテリーが切れないように、しっかりと充電していきました。表町通りに着くと、出店の明かりが煌々(こう・こう)と輝いていました。その中を先生方と一緒に歩きました。僕もこの祭りで育った1人。歩きながら、子どもの頃の思い出がほうふつとしてきました。 

 生徒が僕を見つけて、声をかけてくれました。1年生は僕に駆け寄り「バナナチョコを食べたよ」「型取りをしたよ」と話してくれたり「センセイも一緒に見て回ろう」と誘ってくれたりしました。「電動車いすを押して歩きたい」と電動から手動に切り替えようとする生徒もいました。 

 このような光景を見た地域の方が僕にこんな言葉をかけてくれました。「センセイと生徒のかかわりを見て、ほのぼのとした気持ちになりました」「西中生は心が育っているなと思い、感心しました。これからも、生徒の心を育ててやってください」。生徒が褒められると、教師はうれしいものです。 

 秋田西中では校内でも電動車いすを使っています。僕の場合、腕の力で車いすをこぐことができないので、電動車いすを利用しています。普段、歩行と電動車いすを使い分けて、教師生活を過ごしています。例えば、体育館で集会をするときの整列指導は、電動車いすを活用した方が自由に動くことができて便利です。 

 赴任した4月初め、電動車いすに乗っている僕を、生徒がどのように受け止めるのか、少し気になりました。入学して1週間が過ぎたころ、生徒が「センセイ、車いすを押すよ」。それ以来、生徒が電動を手動に切り替えて、自然と車いすを押してくれるようになりました。休み時間や放課後に、「次の教室はどこ。センセイ、どこに行きたいの」と声をかけ、僕を連れて行きます。 

 生徒は車いすを押したいらしく、ときどき、車いすの取り合いになります。「センセイ、乗らせてよ」と生徒。実際に操作をしてみて「結構、難しいな」と言っています。僕が「そうだよ。だって、運転免許が必要だもん」と冗談を言うと、生徒はビックリした様子を見せます。その表情を見て、僕は笑っています。 

 生徒には、普段の行為に自信を持ってもらいたくて「学校生活で、みなさんの何げない行為が人の心に届くんだよ」といつも伝えています。



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