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輝いて生きよう

どんなときでも笑顔で
 

 

 僕は中学校の数学教師を目指して、生まれ故郷である秋田県の教員採用試験を受験しています。教員採用試験はなかなかの高倍率で二回受験して、二回とも落っこちました。昨年の十月から「ラーニングサポート事業」に係る非常勤講師として、今年の三月までの半年間、秋田市立豊岩中学校に勤務してきました。そのときの様子を紹介したいと思います。 

 

 

 

あだ名は『スマイリーサンノヘ』 

 

 秋田市立豊岩中学校は秋田市郊外にあり、周りに林と田園が広がっていて、近くに雄物川が流れている、とても自然豊かなところにあります。各学年一クラスの小規模校です。僕は三学年の数学の授業と三年生の英語の授業を正教員の補佐として、チームティーチングに当たりました。先生方は、僕を迎えるにあたって、様々なことを懸念したようです。僕と一緒に授業を行う数学の先生は「正直に言うと、本当にやっていけるのか、という懸念はあった。でも、一週間、一緒にやってみて、十分にやれるなぁと思った」と言っていました。 

 

 初出勤の日、校長先生が各学年の授業の初めに、僕のことを生徒に紹介しました。そのときに、校長先生が『スマイリーサンノヘ』とあだ名をつけてくれました。唐突なことでビックリしましたが、生徒たちが親しみ易いようにと考えたのかなぁと思ったら、とても嬉しくなりました。 

 

 

 

生徒たちと一体感 

 

 僕は脳性マヒ一種一級の障害があり、十cmの段差があると、他人のサポートなしでは進むことができません。玄関前の段差、校内の階段…学校はとてもバリアがあるところだと思います。半年間の教師生活は、いつも生徒たちのサポートに支えられていました。一年生、二年生の教室は二階で、数学係は授業が始まる前に「先生、行こう」と言って、僕を迎えに来ました。僕の教科書、授業で使用するプリントを持ち、もう一人は僕のサポートをして、肩を借りて、階段を一段ずつのぼって、教室に向いました。 

 

 正教員が授業をしているとき、生徒の間を回りながら、アドバイスをする役割で、僕がメインとなって行う授業は板書が困難なため、予め授業内容を画用紙に書いて用意をし、黒板に貼って説明をしました。生徒の発表は生徒に板書をしてもらいました。また、長い時間、立っていることがシンドイので椅子に座って、授業をします。常に生徒と目線が一緒で、向き合って、授業をしている感じです。生徒たちも座っているので、とても一体感、親近感を感じます。生徒と一緒に作っていく授業であり、まさしく僕の授業でした。 

 

生徒たちが教えてくれたこと 

 

 僕は自分の障害を語ったことは一度もありませんでした。正確に言えば、その必要性がないのです。生徒たちは<障害者だから…>ではなく、<十cmの段差があると、サポートなしでは進むことが困難な先生>という意識で接してきました。言語不明瞭な僕に「何を言っているのか、分からない」と聞き返したときは僕を一人の先生として、受け止めているのだなぁと思い、とても嬉しくなりました。不思議に思えるほど、生徒たちに全く先入観はなく、特別扱いをしたり、優しさを押しつけるということはありませんでした。逆に、そのことが新鮮でした。授業中、「先生、やるよ」と言って、プリントを配ったり、「先生、ここ、分からない」と言って、僕のところに来たりと、それがとても自然なやりとりでした。生徒たちを通して、人と人とが交わり合うすばらしさを、改めて考えさせられました。 

 

 生徒たちよりも、先生方が戸惑っていました。<先生にそんなこと言われなくても、とっくに知っているよ>というノリで、僕との日々の営みを通して、生徒たちのまなざしが少しずつ優しくなっていき、先生方は何かを深く感じ入っている様子でした。生徒たちのまなざしの確かさや豊かな感性に、僕は大きな希望と期待を抱きます。 

 

 

 

ありのままの自分でいいんだ 

 

 サポートしてくれた生徒に対して、必ず僕は「ありがとう」と言います。喜んでいる生徒たちの表情を見て、あまり誉められたことがないのかなぁと思いました。僕のサポートに<居場所>を見つける生徒もいました。「学校に来ても、何も役割はないけど、先生のサポートならできる」と言ってくれた生徒の言葉はとても印象的で、忘れることができません。僕のサポートに、生徒たちはホッと安らぎを感じ、楽しんでいるようでした。生徒たちには<今を生きていってほしい>と思いながら、接していました。ありのままの姿で生きる僕を見て、<ありのままの自分でいいんだ>と感じ取ってくれたら…とてもステキなことではないでしょうか。 

 

 『初めての赴任校は、生涯忘れることができない』と言われるように、秋田市立豊岩中学校の半年間はいつまでもキラキラと輝きそうです。生徒たちから頂いた色紙と半年間の教育日記をホームページに掲載しています。良かったら、見て下さい。 

 

【新しい生き方・つながり発見マガジン カンパネルラ4号】 

 



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